NHKの番組、100分de名著にてマルクスの『資本論』の解説者に著者の斎藤幸平さんが出演していました。
話す内容が身近な例を取り入れられていてわかりやすく、話し方もゆったりとしていて聞きやすい、魅力的な人だなあと感じました。
なんと年齢も近い。
同世代の人がこんなすごい人になっていて自分は何してるんだかと悲しい気持ちにさせられるほどでした。
そんな斎藤さんの著書が『人新生の「資本論」』です。
資本主義の限界、資本主義をやめる(本では脱成長という言葉が使われています)ことで豊かな生活になることがこの本には書かれています。
この本の中には私たちの身近な例がたくさん出てきます。
中でも私の印象に残ったのはこちら。
例えば、南米チリでは、欧米人の「ヘルシーな食生活」のため、つまり帝国的生活様式のために、輸出向けのアボカドを栽培してきた。「森のバター」とも呼ばれるアボカドの栽培には多量の水が必要となる。また、土壌の養分を食いつくすため、一度アボカドを生産すると、ほかの種類の果物などの栽培は困難になってしまう。チリは自分たちの生活用水や食料生産を犠牲にしてきたのである。-p50『人新生の「資本論」』斎藤幸平
正直、このアボカドの話はショックでした。アボカド大好きだから。
スーパーで並んでいるアボカドがこんな大変な思いで作られているなんて。
別にアボカドがなくても私は生きていける(大好きだけどね)けど、一方でアボカドを作っているが故に困る人がいる。
本の中でも出てきますが、私たちの生活はこういった搾取の上に成り立っていることをこの本を読んで改めて突き付けられました。
日本の中でみれば、暮らしていくことがやっとの人も世界で見ればライフラインすら整っていないところがたくさんあるわけで、日本は島国だから世界のことが見えずに、尚更搾取していることに気づかず、過ごしてしまっているのではないかと思います。
コロナになって個人消費の落ち込みが騒がれていますが、物を買って消費をすることが豊かなのではなく、家族と過ごす時間や自分の趣味に費やす時間があることが本当の豊かさなのではないかと気づいたのかもしれません。
そう思うと日本の景気の低迷というのは、ポジティブにとらえれば日本人が消費に踊らされなくなったということなのかも。
最近の若い人は車を欲しがらないなんて言うけど、それも環境からみればいいことなのかも。
物質的に満たされ過ぎた世界で新しい豊かさにみんな少しずつ気づいてきているのかもしれないとこの本を読んで感じました。