スーパーで他人のかごの中が気になる。『三千円の使いかた』の感想。

202112月にTSUTAYAの文庫本ランキングで2位になっていました。

あとがきが大好きな垣谷美雨さん。

垣谷美雨さんが書いたと言っても不思議でないくらい、扱っている題材や描写が似ていてとても読みやすい一冊です。

 

タイトルは『三千円の使いかた』とありますが、3000円について細かく言及されているわけではなく、何にお金を使うかというところに人となりが表れているというお話です。

お金を使うという選択は1日の中で何回も出てくるので、些細な買い物でも積もってその人となりが形成されていきますね。

この本を読んでから、スーパーで他人のかごの中が気になるようになりました。

スタイルが良い人のかごの中がアボカドと鶏むね肉だったりすると「あ~やっぱり」と思ってしまいます(笑)

選んだ一行は、話に登場する貯金が1000万円ある御厨家の祖母、御厨琴子が近所に住む放浪人の安生にはなった一言。

 

そんなに費用対効果が必要なら、もう、いっそここで死になさい。

―p202『三千円の使いかた』原田ひ香

 

安生は季節もののアルバイトをしてお金がたまったら海外を放浪して暮らす40過ぎの近所のおじさんです。彼女から結婚を迫られますが、結婚や子育ては費用対効果が悪いと言って踏み切りません。

 

祖母は結婚や子育てに費用対効果なんて考え方をする安生を一蹴します。

安生の気持ちというのは若者の多くが感じているところだと思います。

ネットの出現で色々なことが分かり過ぎた結果だし、行く先不安な世の中でそんな気持ちになるのもおかしなことではないと思います。

それに対して若い人の不安を知らない年配の琴子だからこそ、その考え方を一蹴できるのかなと。

この本には家族3世代にわたっての話が入っているので、それぞれが生きてきた時代背景によってもお金に関するとらえ方が違うことが面白味の1つだと思います。